第12回「精神退行」

「まじかるまじかるナース、いやー今日も暇だなっと。ん、なんだこのチラシ
えっと『あの頃をもう1度、そういうあなたにお勧めの薬です』か
なんだろうあの頃をもう1度って・・・面白そうだな、早速注文するか」


数時間後


「ご主人様、なんだかご主人様宛に小包が届いてますよ」


「お、もう届いたか。早いな」


「ところでなんですかその小包の中身は?」


「ん、ああちょっとした趣味だよ趣味」


「・・・趣味もほどほどにして下さいね」


「さて、テシカたんも去ったことだし、早速中身を確認・・・
何々『この薬をあなたの気になる人に飲ませて下さい、きっと満足するはずです』
なるほど、しかしそのまま飲ます訳にもいかないし、ジュースか何かに混ぜるか・・
いや、普段そんなことしない俺がやっても怪しいだけだしなぁ・・・」


「お兄ちゃん、なにやってるの?」


「コノアたん・・・そうだ!コノアたんなら怪しまれずに飲ませられるな
ということでコノアたん、このジュースをテシカたんに渡して欲しいんだ」


「どうしたのお兄ちゃんがお姉ちゃんにジュースをあげるなんて珍しいね」


「いやーいつも仕事してもらってる感謝の証ってところかな。でも直接渡すのは恥ずかしいし
コノアたんお願いできるかな?」


「そうだったんだ、お兄ちゃん優しいね。わかった渡してくるね」


「あー俺からって言うとテシカたん怪しむからコノアたんがジュースをあげるってことにしてもらえる?」


「お兄ちゃん恥ずかしがりやさんなんだね、じゃあ行ってくるね〜」


「第一の障害をクリア、これより第二段階に移行します」


「お姉ちゃんお姉ちゃん」


「あらどうしたのコノアちゃん」


「これあげるね♪」


「ジュース?ありがとうコノアちゃん、お姉ちゃんちょうど喉が渇いてたんだー」


「じゃあコノアはお兄ちゃんにお仕事頼まれてるから行くね〜」


「はい行ってらっしゃい。変なことされないようにね」


「お兄ちゃん、お姉ちゃんにジュース渡してきたよ〜」


「ありがとう。じゃあコノアたんは夕食まで休んでていいよ」


「わかった〜じゃあねお兄ちゃん」


「えーっと説明書きによれば効果が出てくるのは服用してから1時間後か」


「ご主人様、お掃除は全て終わりました」


「ご苦労さま、じゃあ後は部屋で休んでていいよ、夕食の時間になったら呼びにいくから」


「今日の夕食の支度がまだ終わってませんけど?」


「あー今日はいいよ、たまにはテシカたんにも楽をさせてあげないとね。
それに今日は出前を取りたい気分だから。」


「そうですか・・・?だったら部屋で休ませてもらいますね」


「1時間後くらいに届く予定だからそのときになったら部屋まで呼びにいくよ」


「わかりました。それでは失礼します。
それにしてもご主人様、今日はなんだか優しいですね」


「まぁたまにはこういう日があってもいいだろ。それに俺はいつも優しいの」


「ふふ、わかりました。じゃあ失礼します」


「さて、じゃあ1時間後を楽しみにしよう。・・ちゃんと効果があるかは微妙だけど」


そして1時間後


「さて、そろそろ時間だな。テシカたんの様子でも見に行くとしようか」


「お兄ちゃん、そろそろご飯の時間だよ〜」


「お、コノアたん。じゃあ一緒にテシカたんを呼びに行こうか」


「珍しいね、お姉ちゃんがまだ部屋にいるなんて」


「おーい、テシカたーん、ご飯だぞー」


「返事がないね。寝てるのかな?」


「開けてみるか。おーいテシカたん入るぞー」


「寝てるねお姉ちゃん」


「おーい起きろテシカたん、ご飯だぞー」


「や〜てしかまだねむい〜」


「・・・・・・・ぇ」


「・・・・・・お姉ちゃん?」


「うーん、いいにおい。お兄ちゃんご飯」


「お兄ちゃん!?どうしたんだテシカたん?・・・って
もしかしてあの薬が効いてるのかな?『あの頃をもう1度』というのはつまり
幼 児 退 行 ! ?」



「お姉ちゃんなんだか変だね」


「どれどれ試しに聞いてみるか。
テシカちゃーん、今何歳?」


「4ちゃい」


「・・・・・・・・ゎぉ」


「・・・・・・・ぅゎぃ」


「・・・お兄ちゃんおしっこ」


「ぇ・・・ああ、トイレはすぐそこだよ。行っておいで」


「お兄ちゃんもいっしょにきて・・」


「なっなんだってえええええええええええええ!!」


「もれちゃう・・お兄ちゃん早くいこう。」


「たたた大変だ!えっと・・・・コノアたん、どうしよう」


「お兄ちゃんも一緒に行ってあげるのが1番だよ。」


「やっぱりそうなる?お願いコノアたん、一緒について来て。流石に個室までは一緒にいけないから
そこからはコノアたんにお願いするね」


「うーん、コノアはいいけど今のお姉ちゃんが問題だね。お兄ちゃんがいないと駄目っぽいような気もするよ」


「はやくはやく〜」


「ひぃいい、とりあえずテシカたんをトイレに連れて行くことが先決だ。
さぁテシカたん着いたから行ってきなさい」


「いっしょにはいって・・・」


「やはりか!?こここコノアたんバトンタッチ!」


「わかった〜。さぁお姉ちゃん、一緒に行こうね〜」


「やだやだやだー、お兄ちゃんと一緒にはいるの〜」


「お兄ちゃんは男の人だから一緒には入れないんだよ〜。変わりにコノアが一緒に行ってあげるから我慢してね」


「・・・わかった。」


「おお・・コノアたんが輝いて見える」


「えへへ〜お待たせお兄ちゃん」


「あははは〜」


「・・・お疲れ様コノアたん」


「お兄ちゃんテシカお腹すいたよ〜はやくご飯たべよ」


「あ、ああそうだね。じゃあ下に降りてご飯食べようね〜」


「お兄ちゃん食べさせてあげるね〜。はいあ〜ん」


「ひぃ!!こここコノアたん、パス」


「お兄ちゃんこればかりは無理だよ〜。でもいいんじゃないお姉ちゃんがこうなってる姿なんて
もう後にも先にも見れないと思うし。何かするにも今のうちだよ〜」


「むぅ言われてみればそうかもしれんな。あ〜ん」


「おいちぃ?」


「おいしいよ〜。(まぁ薬の効果も時期に切れるだろうし今は付き合ってみようか)」


2日目


「お兄ちゃん一緒にお風呂はいろ〜」


「きぃやぁああああ!コノアたん任せた!!」


「そんな!お兄ちゃんひどい!」


3日目


「お兄ちゃん1人じゃ怖いの・・・一緒に寝て」


「ひいい!コノアたん(以下略)」


「そんな!おにいちゃん(以下略)」


そんなこんなで1週間目


「うーん、あれ、私なんでこんなところで寝てるんだろ?
あ、ご主人様にコノアちゃん・・・」


「るーるーるーるーるー」


「るーるーるーるーるー」


「何事!?」


「る・・・るー」


「なんだろうこの本・・日記?」


1日目:今日は通販で面白そうなものを買った。さっそく実験してみたいと思う。
実験の結果、この薬は人間の精神を退行させるものだということが分かった・・・

2日目:てっきり薬の効果は1日で消えるかと思ったがどうやら様子を見る限りまだ効果は持続しているようだ
今日も色々あった・・・安易に実験をするべきじゃないということが分かった

3日目:朝、様子を見る限りどうやらまだ効果が続いてるみたいだ。
心なしかコノアたんの様子が変な気がする。

4日目:てっきり3日で終わるかと思ったがまだ消えないようだ・・・
時折コノアたんが変な言葉を口走るようになってきた

5日目:まだだ・・・まだ終わらんよ・・・。この宇宙は地獄だ・・・
コノアたんが誰もいないところに向かって話しかけていた

6日目:・・・・なんだか頭の中に変な声が聞こえる。
俺は・・・・・るー

7日目:るーるーるーるーるー


「・・・で、結局なんなんでしょうかこれ」


「るー」


「るー」


その後、彼らが普通の人間として暮らせるようになるには1週間かかったらしい